保証人の悪夢
悪夢その
大学時代の友人と久しぶりにバッタリ街中で遭った。その日の夜は、酒を飲み交わしながら、大学時代の学生生活の話で盛り上がった。彼は大学卒業後、大手の都市銀行に就職したが、その銀行は倒産し、現在は中堅の損害保険会社に勤務しているという話だった。その夜は、名刺を交換し別れた。
それから数日後、彼から電話があった。100万円クレジット会社から借りるので、保証人になってもらえないかという依頼だった。1か月後にはボーナスで完済するので迷惑など絶対掛けないという話である。あまり気が進まなかったが、すぐ完済するということなので、問題ないだろうと思い保証人になることにした。その日の昼休みに彼が私の会社まで契約書を持参したので、保証人欄に署名し免許証のコピーを渡した。「コーカイクレジット」という名前も聞いたことのない会社だった。
それから更に3か月後、どすの効いた低い声の男の人から突然電話があった。彼から入金がないので、全額払ったくれと言う。利息払いが続いていたので、100万円近くの元金が残っているという話である。その日のうちに何回も請求の電話があったので、仕方なく利息分だけ送金した。
その後、本人について調べてみると、1か月前に会社を辞め妻とは離婚したそうだ。大学時代の友人の何人かが同じように保証人になった者がいるようだ。彼の実家は、長崎の雲仙のど田舎だと聞いたことがある。そちらにも連絡はなく、毎日のように見知らぬ人から電話があるが、連絡が取れずに困っているらしい。「あっちこっちからお金を借りて迷惑をかけているようで申し訳ありません」と年老いた母が電話口で謝っていた。この先、どうやって100万円返そうかと思案中である。
悪夢その
近所の商店街仲間の呉服店の社長が突然挨拶に来た。「実は今度銀行から設備資金として1000万円借りるので保証人になってもらえないだろうか」という相談であった。この社長とは、昔からの知り合いで小・中学校も同じクラスだった。また3年ほど前、私が国民生活金融公庫から運転資金として200万円借りる際に保証人になってもらったことがある。以前に世話になったので断りづらい。「不動産も担保に入れるので心配せんでいいよ。万が一の場合は不動産を処分すれば借金は返せるから」と社長は笑いながら話した。確かにその社長のビルなどは駅前の一等地にある。それでも多少不安に思ったが、かと言って断ることもできず、妻には内緒で保証人になることにした。
それから半年後、その呉服店について悪い噂が流れていた。最近その呉服店には人相の良くない人が出入りしており、店の前には黒の外車がよく止まっているそうだ。それから間もなくして、取引銀行より電話があった。呉服店が不渡りを出したらしい。銀行が手形割引をしていたので、その支払は保証人である私の口座から落としますと言って来た。その資金は私の手形の決済資金だと言っても銀行の担当者には相手にしてもらえなかった。
これがきっかけとなり、私自身も不渡りを出してしまい、親から継いだ書店を閉めることになった。現在、自己破産申立ての準備中であり、妻からは離婚を迫られている。その後の風の便りでは、呉服店の元社長は妻とは離婚して、大阪で浮浪者みたいな生活をしているそうだ。例え破産が認められたとしても、その後の生活の目処は全くない。
悪夢その
同じ市内に住んでいる兄と姪(兄の長女)が挨拶にきた。姪が来春大学を卒業して福岡市内にある商事会社に勤めることになったと言う。その会社は、地元では名の通った会社であり、私も喜んだ。そこで、入社に際して身元保証人になってくれないかという依頼だった。父親である兄以外に、別世帯の保証人がもう一人必要になっているそうだ。姪も実家から通勤するという話なので、特に心配することはなかろうと考え承諾した。
それから4年が経過したある日、兄が沈んだ顔をしながら私の家にやって来た。姪が男と逃げたと言う。その男とは、スナック勤めの遊び人風だったらしい。兄は一度会ったことがあるようだ。姪は2年程前より福岡市内にアパートを借りて一人住まいを始めていたらしい。実はと、兄は更にびっくりするようなことを話し始めた。姪は会社の経理担当だったが、会社の金を3000万円程使い込んだのが発覚したらしい。恐らく近日中に、その会社より連絡があるだろうと兄はぼそぼそと言った。ここで初めて思い出した。4年程前に姪が入社をする際に身元保証人になったことを。
その翌日、姪が勤めていた会社の顧問弁護士から内容証明郵便が届いた。身元保証人として3000万円を支払うようにという内容だった。私も住宅ローンと子供2人の教育費を抱えている。どこにも3000万円などあろうはずがない。何の見返りもなく身元保証人になったばかりに、こんなことになるとは後悔しても後悔し切れない。妻にもこの事態を相談できず、仕事も手に付かない不安な日々を送っている。
※以上の各事例は、保証契約に関するトラブルを理解しやすいようにするためのフィクションです。